KAGEROU(齋藤智裕著)
元俳優の水嶋ヒロが、芸能界を引退して執筆した処女小説「KAGEROU」。ペンネームで応募していたので、受賞まで誰も作家の正体を知らずに、第5回ポプラ社小説大賞を受賞。と、何となく出来過ぎた感が否めない曰くつきの小説です。
人の命、自殺、臓器移植、人間愛と重い内容ですが、さらっとしたテンポのいい文章なので、数時間で読了できます。つまり、どれもこれも軽い内容になってしまっていて残念。臓器移植が一般的でない日本が舞台の小説なので、「どうせ自殺するつもりだったから」と、ひとつひとつの臓器に値段を付けることに違和感がないのでしょうか。
最後の「いまなら生きるチャンスがあたえられようものなら毎日を全力で生き、」には、「そうそう、そうこなくっちゃ」と同意しながら、次の「その上でアカネのために死ねと言われれば喜んで自分の命を差し出すだろう。人を愛するということはその人のために生きることであり、同時に死ねることだ。」にはがっかり。まるで「自殺大賛成!」と言っているようです。いくら、二千万円の遺産が入ったからといって、子供の死を喜ぶ親はいないでしょうに。
たった二回会っただけのアカネに、死んでもいいと思える程の愛を感じられるとは信じ難いものがあり、ポプラ社小説大賞受賞と同じように、小説も何となく出来過ぎた感が否めないお話しでした。
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